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2025/08/01

第14回 産業用ロボットのオフラインティーチングについて

オフラインティーチングとは、
産業用ロボットのティーチング作業を、ロボットの機体を使わずに行う方法です。
具体的には、以下の流れで行います。

  1. コンピュータのソフトウェアを使用してロボット動作用のプログラムを作成
  2. プログラムをロボットに転送

■ オフラインティーチングの特徴とメリット

・シミュレーション
 実際の生産ラインで稼働させる前に、ロボットの動作をシミュレーションすることができます。
 問題点を事前に確認し、最適化することが可能です 。

・生産性向上
 ロボットの稼働を停止する必要がないため、製造工程でのタイムロスを削減できます。

・育成コストの削減
 バーチャル空間では時間や安全などの様々な制約が緩和されるため、より多くの経験を積むことができ、
 ティーチングエンジニアの育成期間を短縮することができます。

■ オフラインティーチングのデメリット

・実機との乖離
 コンピュータ上でシミュレーションを行うため、実際のロボットの動作と完全に一致しない場合があります。
 このため、実機での微調整が必要になることがあります。

・ソフトウェアの互換性
 ロボットメーカーごとに異なるソフトウェアを使用する必要があるため、
 異なるメーカーのロボットを扱う場合には、複数のソフトウェアを習得する必要があります。

・位置や速度の調整
 実際にロボットを動かしているわけではないため、位置や速度の調整が難しい場合があります。
 これにより、ティーチングの精度が低下する可能性があります。

■ オフラインティーチング導入のハードル

・初期費用
 オフラインティーチングを行うための専用ソフトウェアやハードウェアの導入には初期費用がかかります。

・専門知識の必要性
 プログラミング言語やCADの知識が必要となるため、専門知識を持った人材の育成が必要です。

オフラインティーチングを導入する際には、これらの要素を考慮し、慎重に検討することが重要です。

■ オフラインティーチングによる基本適用事例

オフラインティーチングの基本的な活用方法を紹介します。

・補助プログラム(PRG)の作成
 原位置(※1)、チップゲージ(※2)、ガンサーチ(※3)などの補助動作をオフラインで作成し、現場では微調整のみで済むようにできます。

・作業プログラムの事前作成
 実際の塗布や搬送などの動作をオフラインで構築し、現場では干渉チェックや微修正のみで済むようにできます。

・不具合の事前把握
 ロボットと治具の干渉や、姿勢の取りづらさなどをオフラインで検出し、現場でのトラブルを未然に防止できます。

※1 原位置
「基準の位置」であり、原位置を基準にして各動作点を作成します。
安全性・再現性・復旧性の観点から、非常に重要です。
・ロボットが予期せぬ動作をしないよう、動作開始前に必ず原位置に戻すことで、安全性が高まります。
・すべてのプログラムが同じ位置から始まることで、動作の再現性が高まります。
・異常停止やエラー発生時に、原位置に戻すことで、復旧作業がしやすくなります。

※2 チップゲージ
スポット溶接ガンの電極チップの摩耗量を測定・管理するための作業PGです。
摩耗が進むと溶接品質が低下するため大事な作業になります。

※3 ガンサーチ
ロボットティーチングや自動化工程において、溶接ガンのツール位置を自動で検出・補正する動作になります。
精度・安全性・品質を確保するために不可欠な作業になります。

■ オフラインティーチングの導入効果

オフラインティーチングの主な導入効果は以下の4点です。

・生産性向上:1台で複数作業に対応
・品質の安定:人為的ミスの排除
・労働環境の改善:高温、重筋作業の自動化
・初期投資の抑制:多車種混流ラインへの対応

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