COLUMN

技術コラム

2025/03/03

第09回 鍛造金型設計とは

■ 鍛造とは

『鍛造』とは、ハンマーやプレスで金属を叩いて変形させつつ、強度を高める技術です。
強度が必要な製品に使われることが多く、自動車や航空機の部品から身近な製品まで幅ひろく活用されています。

・自動車部品: クランクシャフト、コンロッド、ホイール
・身近な製品: 鍬(クワ)、日本刀、包丁、ハサミ、ゴルフクラブ

類する工法に『鋳造』があります。よく『鍛造』と比較されますが、いくつかの点で違いがあります。
『鋳造』は材料を溶かして使うのに対し、『鍛造』は材料を熱して(または常温で)使うことが多いです。
材料は溶かしてしまうと、変形をさせるのは容易ですが、製品の強度は落ちます。
そのため『鋳造』と『鍛造』は目的によって使い分けられます。

・鍛造: 強度が必要な製品向け。複数の工程を経るため成形までが難しい。
・鋳造: 鍛造より強度を必要としない製品向け。鍛造より少ない工程で成形ができる。

各工法の普及具合としては、鋳造品の方が多く、鍛造品は少ない状況です。
見方によっては『鍛造』は従事している人が少ないため、特殊な専門性を持つ分野とも言えそうです。

■ デジタルを生かした鍛造品

自動車部品など、量産される鍛造品はプレス機を使って何万個と生産します。
熱せられた金属が複数工程のプレスを経て製品になりますが、この生産工法には大きな問題点があります。
現物を打っている最中が、まるで『見えない』事です。

『見えない』理由

・材料が高温になるため、安全に人が近づいてみられる距離は限りがある
・スケール(酸化被膜)や潤滑剤など、周囲の状況により見えにくくなる
・型がほぼ密閉なため、製品はほぼ見えない状態にある

常温まで冷やして、煤を落として、ようやく製品と対面できます。
そのため『打ってみるまでは分からない、打ってみてもよく分からない』のが鍛造工法なのです。
複数ある工程のどこに手を加えればよいのか・・・長らくベテランの技術者の匠の世界でした。

そこに光明が差したのがデジタル技術です。

・3次元CAD: 曲面だらけの型を精度のよく作ることが出来るようになった
・3次元CAE(解析): 今まで『見えなかった』成形中の変化をデジタル上で再現することができるようになった

3次元CAD×3次元CAEの組み合わせにより、バーチャルの世界で実機と同じ現場検証が可能になりました。
デジタル設計は時間やコストの短縮だけではなく、設計技術力の見える化や技術の標準化、データの転用、生産技術の継承など様々な面で恩恵をもたらしました。
また計測技術の進歩も追い風となり、現場での知見がデジタルで見える化され、リバースエンジニアリングに多大な貢献をしました。
今やこれらの技術を使わない設計は考えられないほどです。

■ 今後の鍛造型設計の展望

ものづくりの技は、今や従来の職人技術はデジタルに置き換えられ標準化が進んでいます。
匠の世界は、次第に誰でも活用できる技術に代わりつつあります。
その先端はAI活用になり、既にAIが製品の試作形状を提案し、それを活用して設計を進める時代になりました。
しかし、コンピュータで作れる形状の精度はまだまだ荒く、しばらくは人間の手が介在しそうです。

また、そのコンピュータの精度を上げるのは情報(条件)であり、それらを作り指示できるのは人間になります。
つまり、職人技術をさらに匠として精度をあげることが、AI活用の基盤となっていくわけです。
今は職人技術が標準化される時代と、反して職人技術に磨きをかける時代の最中になります。
これからのデジタル技術者は、その両方の視点を持ちつつ、日々の業務に取り組んでいく必要がありそうです。

弊社では、デジタル化が進む生産技術に関わる、様々なエンジニア派遣を行っております。


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